文書作成日:2025/05/22
助成金制度は年度単位で予算が立てられているものが多く、年度初めに多くの助成金の創設・改廃が行われます。今回は、国が力を入れている賃上げ支援助成金パッケージと新設された両立支援等助成金の「不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース」を紹介します。
「賃上げ」支援助成金パッケージとは、厚生労働省が企業の賃上げを支援するための支援をまとめたもので、業務改善助成金、キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)、働き方改革推進支援助成金、人材開発支援助成金、人材確保等支援助成金(雇用管理制度・ 雇用環境整備助成コース)、特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース)、早期再就職支援等助成金(雇入れ支援コース、中途採用拡大コース)、産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)から構成されます。以下では、この中から特に注目されている2つの助成金をとり上げます。
(1)業務改善助成金
業務改善助成金は、事業場内最低賃金を30円以上引き上げ、生産性向上に資する設備投資等を行った場合に、その設備投資等にかかった費用の一部を助成する制度です。この事業場内最低賃金とは、事業場で最も低い時間給を指します。
対象となる企業は、中小企業・小規模事業者で、今年度より大企業と密接な関係を有する企業(みなし大企業)は対象外となりました。また、事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であることが必要です。
対象となる設備投資等には、生産性向上に資する設備投資等が助成の対象となり、例えば以下のようなものが挙げられています。
経費区分 | 対象経費の例 |
機器・設備の導入 | ・POSレジシステム導入による在庫管理の短縮 ・リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮 |
経営コンサルティング | 国家資格者による、顧客回転率の向上を目的とした業務フロー見直し |
その他 | 顧客管理情報のシステム化 |
[支給額]
支給額は、生産性向上に資する設備投資等にかかった費用に、助成率をかけた金額になります。助成率は、引き上げ前の事業場内最低賃金に応じて設定されており、1,000円未満の場合は5分の4、1,000円以上の場合は4分の3となっています。
なお、この支給額については上限額が設けられており、事業場内最低賃金の引き上げ額と引き上げる労働者数によって定められています。また、事業場規模30人未満の企業については、それ以外の規模の企業よりも上限額が高く設定されています。
[注意点]
2025年度からの変更点として、申請期間と賃金引き上げ期間について複数の期間が設定されました。第1期(2025年4月14日から6月13日まで)の賃金引き上げ期間は、2025年5月1日から6月30日までとなっています。
賃金引き上げ時の注意点としては、申請日より後に行う必要があります。また、地域別最低賃金の発効に対応して事業場内最低賃金を引き上げる場合、申請後から発効日の前日までに引き上げる必要があります。
(2)キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)
有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等を3%以上増額改定し、その規定を適用させた場合に助成されます。この対象となる労働者にはいくつかの要件が設けられており、例えば以下の項目があります。
- 賃金規定等を増額改定した日の前日から起算して3ヶ月以上前の日から増額改定後6ヶ月以上の期間継続して、支給対象事業主に雇用されている有期雇用労働者等
- 就業規則または労働協約に定めるところにより、増額改定した賃金規定等を適用され、かつ、増額改定前の基本給に比べて3%以上昇給している者
- 賃金規定等を増額改定した日の前日から起算して3ヶ月前の日から支給申請日までの間に、合理的な理由なく基本給および定額で支給されている諸手当を減額されていない者
また、対象となる企業についても要件が設けられています。
[支給額]
支給額(1人当たり)は以下のとおりです。
企業規模\賃金引き上げ率 | 3%以上 4%未満 |
4%以上 5%未満 |
5%以上 6%未満 |
6%以上 |
中小企業 | 4万円 | 5万円 | 6.5万円 | 7万円 |
大企業 | 2.6万円 | 3.3万円 | 4.3万円 | 4.6万円 |
1年度1事業所当たりの支給申請上限人数は100人です。また、有期雇用労働者等に適用される昇給制度を新たに規定した場合などには、金額が加算されます。
[注意点]
キャリアアップ助成金の活用にあたっては、コースの実施日の前日までに「キャリアアップ計画」の提出が必要です。
[支給額]
支給額は以下のとおりで、それぞれ1事業主当たり1回限りです。
支給要件 | 支給額 |
不妊治療のための両立支援制度を5日(回)利用 | 30万円 |
月経に起因する症状への対応のための支援制度を5日(回)利用 | 30万円 |
更年期に起因する症状への対応のための支援制度を5日(回)利用 | 30万円 |
[注意点]
制度の利用対象者は、雇用保険被保険者以外の労働者も含める必要があります。
助成金には予算枠が設けられているため、いざ活用しようと考えたときに、受付が終了している可能性があります。活用にあたっては、最新情報を確認しましょう。
■参考リンク
厚生労働省「「賃上げ」支援助成金パッケージ」
厚生労働省「業務改善助成金」
厚生労働省「キャリアアップ助成金」
厚生労働省「両立支援等助成金のご案内」
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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